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 藤沢町からみる住民自治のあり方

市町村合併の流れによって11月現在全国の市町村の数は3000をきった。合併を含めて地域間の連携により行財政の効率化を追求する動きがあるが、一方で暮らしのレベルでより密接なつながりを持つコミュニティが重要な存在となり、住民がどれだけ自立しているか、そしてその「地域力・住民力」を生かせるかどうかが、まちの方向を決定付けることにもなりうる。しかし現状では地方自治において権力をもっているのは地方議会の議員であるといえる。そこで岩手県藤沢町の住民自治を参考にして住民自治の重要性やあり方を考えていきたい。

住民自治活動の基本単位は、44の自治会組織で、1自治会当たりにすると平均約70世帯240人で構成されている。1955(昭和30)年の4町村合併当時から続いた行政区を見直す形で、70年代に8年がかりで自治会組織が整備された。役員は互選で無報酬のボランティア。加入率百%。「地域が責任を持って地域を創り、経営する」ことを柱に、福祉・保健予防、環境、教育、防犯など広汎な活動を展開するとともに、「地域ミニ計画」づくりを通じて、自治会のアイデアや要望を行政に反映している。行政区長のほか民生委員、児童委員や各種公的機関・団体の評議員らを推薦することで、地域の声を生かす仕組みにもなっている。また、自治会活動は、行政とのパイプ役として配置された地域分担の職員(役場職員など)と協力し合って、進められている。

藤沢町の住民参加型まちづくりは、生活環境の整備にとどまらず、医療・福祉、教育の分野で大きな成果を上げている。全町の90%の世帯が参加している民間ボランティアや地域福祉医療基金が、それを裏付けている。しかし、最も注目すべきは、住民自治を主眼とした自治会の組織化が、産業振興策と連動して進めらたことにある。また、産業振興のひとつの柱が「農工一体のまちづくり」で、半生を託せる企業の誘致に当たっては、住民が融通し合って工場用地を提供するなどした。

しかし藤沢町も財政難により合併を余儀なくされる可能性が高い。住民は「行政が広域化していくとしても集落単位の生活基盤は変わらない。しかし、これまで以上に住民同士の結束を強めることが必要だし、地域の声を反映させるしくみが重要になってくる」という。藤沢町の例を参考に合併後の住民自治のあり方も同時に考えていきたい。